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【吉田編集委員の取材後記】ビビッドガーデンの取り組みと農のミライ

ビビッドガーデン代表の秋元里奈さんに初めてインタビューしたのは、新型コロナの感染拡大が始まったばかりのときでした。産直サイトは送料を消費者が払うのがサービスの基本ですが、同社は一部を負担することで利用を促しました。その後の躍進の出発点とも言うべき試みです。

同社を取材していると、戦略の機動性と一貫性をともに感じます。コロナのもとでの送料の一部負担は、機動的な対応を端的に示す例です。

今年6月、「食べチョク」のサイトにアップした記事も対応の素早さが際立ちました。タイトルは「生産コスト高騰に関するお知らせ」。肥料や燃料など資材費の上昇を受け、生産者がいかに困っているのか緊急調査を実施し、「生産者の値上げに賛同しサポートを行っていきます」と宣言しました。農家の多くがコストの上昇分を価格に転嫁できていなのを踏まえた内容です。

一方で一貫性を感じるのが、できるだけ多くの生産者に参加してもらおうというスタンスです。秋元さんには定期的にインタビューしていますが、彼女がくり返し強調しているのが「高齢の生産者を支援したい」という点です。スマホで農産物を出品するのが必ずしも得意ではない層です。

自治体や地方銀行などと組み、スタッフとじかに接してサイトの利用方法を説明する機会を設けているのは、高齢農家が参加しやすい環境にするための取り組みです。「サイトを見ればやり方はわかるはずだ」という姿勢では、ネットを扱うのに不慣れな生産者が利用するのは難しいのです。

今回の放送でも、「生産者のこだわりが正当に評価される世界へ」という同社の掲げる目標がテーマになりましたが、ベテランの農家にも配慮したサービス運営は、その根幹に関わります。せっかく優れた腕を持っていても、大量流通の中に埋没してしまっている人も少なくないからです。

「農業にもマーケティングが必要」という言い方があります。でも、それができる農家はごく一部です。美味しい作物を育てる技術はあっても、市場の動向をつかみ、自ら売るのは不得意な農家も大勢いるでしょう。産直サイトは、そうした農産物を消費者が「発見」するツールになるかもしれません。

そのために、ビビッドガーデンは生産者がただ漫然と出品して終わりのサイトではなく、消費者がほしいものを見つけたり、予想していなかったいいものに出会ったりできるような「店づくり」を目指しています。課題はなお様々にありますが、起業スピリッツで突破することを期待しています。