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「上農は草を見ずして草をとり、中農は草を見て草をとり、下農は草を見て草をとらず」【吉田編集委員の収録後記】

「上農は草を見ずして草をとり、中農は草を見て草をとり、下農は草を見て草をとらず」。今回のゲストであるサラダボウルグループの代表、田中進さんと話していつも思い出すのは、明代の中国の農書「農説」に由来するこの言葉です。
中農と下農に関するくだりはわかりやすいでしょう。田畑に雑草が生えてしまったとき、刈り取るかどうかの差を示します。ここでは刈るのが正解です。
これに対し、上農は解釈が分かれるかもしれません。普通に考えれば、まだ草が生えないうちに、土を耕して除草の手間を省くことなどを指します。でも田中さんの営農に関する考え方を聞いていると、もっと別のことを連想します。
「いい農場というのは、誰がやっても簡単にできそうな姿をしている」。田中さんは以前、取材でこういう趣旨のことを語っていました。きちんと管理が行き届いた農場は、農作業や作物の生育がスムーズに進むという意味です。
反対にダメな農場は、道具が作業場に散らかっていたり、栽培の段取りがうまくいっていなかったりします。ベテランのスタッフが得意げにそれをテキパキと処理して、「やっぱり自分がいないとうまくいかない」と自慢することもあるでしょう。田中さんはこうした作業のやり方を厳しく批判します。

サラダボウル代表 田中進さん

理想としているのは、問題が顕在化する前にその芽を摘んでおくような仕事の進め方です。だから作業が簡単に進んでいるように見えて、じつはその背景には経験と創意工夫を背景にした高度なノウハウがあるのです。
サラダボウルグループを見ていて感じるのは、そうした点です。すると上農に関しても、たんに雑草への対処の仕方だけでなく、もっと広い内容をイメージしてもいいのだと思えてきます。与えられた条件のもとで臨機応変に柔軟に対応して、トラブルを未然に防ぐ。農業にとって最も大事なことでしょう。
それは今回、収録のために訪ねた静岡県小山町の農場にも表れていました。一見すると、作業の多くを自動化した先進的な部分ばかりが目立ちます。
でもよく見ると、まるでDIYの感覚で様々な工夫が施されているのに気づきます。栽培過程でレタス移し替えるとき、まとめて楽に取り出すことのできる大きなフォークのような器具はそのひとつ。スタッフが考案したものです。
農場の中をぐるりと巡るコンクリートの通路には、大きなくぼみがいくつかありました。殺菌剤を入れておいて、靴や車輪をきれいにするのが狙いです。万が一病気が発生しても、他の場所に広まらないようにするためのアイデアです。
こうした工夫を積み重ねることで、農場運営のレベルは格段に高まります。でももっと大切なのは自分の頭で常に考えるようにすることで、スタッフが成長することです。それを実現できるかどうかが、農場の発展のカギを握ります。
 

↑↑ 田中進さんが出演されている放送回、ぜひお聴きください!

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